blog 院長ブログ

歯を抜いたらどうするの❓

2021.09.16

患者さんがお見えになりました。

「せんせ~、噛めません。どうにかなりますか?」

「ハイ、大丈夫です。どういう風に噛めるようにしたいですか?」

『右の下の奥から2番目が痛くて噛めません。あと、左の一番奥もベロに引っかかります。』

『ではホープレスな右下奥から2番目と左上一番奥をぬいていきますね。』

『ハイ、抜けましたよ。いかがですか?』

『ばっちりです。有難うございました』

と二本抜くだけで終わりました。

ではこの場合長期的予後を安定させるためにはどのような治療方針が考えられるでしょうか?

この場合治療方針の決定に影響を及ぼす要因としては、治療にかかる回数とコストとなります。

1.コスト重視で行くのであれば、右下と左上に部分入れ歯を作って完了となります。

2.コスト及び治療期間は置いといて、咬合の安定を重視すると矯正+インプラント埋入となります。

3.上記二つの折衷案として右下、左上に歯を削ってブリッジをという選択になります。

1.の治療の場合、まずは口腔内全体の歯周病の有無をチェック後、ポッケトの深さ4ミリ以内で歯肉から出血のない状態に持っていきます。ここまで1から2か月、その間に右下4本目や左下5本目の虫歯の治療を行います。そののち、型どりを行い、調整しつつ、に散会で入れ歯を装着します。入れ歯は歯肉に乗っかりながら、他の近接する歯にばねをかけるのではじめのうちは違和感がありますので、使い慣れていただく期間が必要です。

3.のブリッジの場合、最初の段階の歯周治療の仕方は同じです。その後、右下は前方の歯を二本、後方の歯を一本形成して5本のブリッジを製作していきます。左上は前後一本ずつの歯を形成し、3本のブリッジを作って完成です。

2.の治療方針の場合も、初期の歯周病治療は同じです。只ここからの行程は歯牙咬合関係の安定つまり20年から30年もつように治療方針を組んでまいります。右上の3本のメタルは取り除き、グラスファイバーの土台にセラミックをかぶせます。左下のメタルも同様に取り除きセラミックに変更いたします。これにより歯牙破折のリスクを下げます。

ここからCT撮影を行い右下2本左上2本インプラントを埋入いたします。右下が埋入後1ヶ月、左上が埋入後3カ月たったらインプラント本体に上部構造を製作、装着を行い当座の顎位の安定を図ります。臼歯部で噛めない場合、通常した下顎を前に出して噛んでいるので、奥歯で噛めるようになると下顎がもともとの顎位に戻り後退することが多いです。

これで顎位が安定したら口腔内全体をスキャニングし、全体の歯牙配列を検討に入ります。今回は左下の前に倒れてきている大臼歯を後方へと起こすと同時に、左下親知らずを抜歯します。全体的にバイトが深くなっているのが常なのでバイトを適正な深さに修正しつつ左下大臼歯を後方に起こしてその前方の空いたスペースにインプラントを一本埋入します。そして一カ月でインプラントの上部構造をセットして完了です。この期間が3か月から10カ月ぐらいです。

経過観察に移り、3カ月毎のメンテナンスを繰り返すと歯牙喪失リスクは限りなくゼロとなります。

このように治療方針は同じ患者さんでもいくつか想定できこれが正解というのはありません。その都度その都度じっくり話し合ってきめていくのが良いかと思います。

何も気にすることなく、食べたり談笑したり、時にはぐっとかみしめて体に力を入れたり集中したり歯はいつもあなたと共にあります。時には体の平衡感覚を整えたり、はたまた頸椎からの脳への血流量を調整したりと大忙しの日々を送る歯牙といついつまでも共に歩んでいけるようにお手伝いできれば幸いです。